医療現場でのデバイス治療後のリード抜去は、患者の安全を確保するために重要な手技です。しかし、リードの経年や患者の体格、既存のリードの状態など、多くの要因が手技の難易度に影響を与えます。本対談では、不整脈領域のエキスパートである南口医師と梶山医師がリード抜去の現場で直面する課題やその対策について、最新の知見を交えて語ります。
司会)
リード抜去はどのぐらい経過すると実施が難しくなるものですか?
梶山医師)
年数だけではわからないことも多々あるので一概には言えませんが、ICDで10年、ペースメーカーで15年というのが結構難しくなるとか言われているとは思います。
年数以外の要素というと、患者さんの体格が極端に太ってるとか、極端に痩せているなど、条件でも難しくなりますし、何か起こったときのマネジメントが難しくなると思います。
南口医師)
梶山先生の病院では、他の施設でやってみたけど難しかったために千葉大学に紹介されるというケースはありますか?
梶山医師)
最近送られてくる症例は、結構短い年数のものが、お願いしますという感じで紹介いただくことが多いですね。2年とか3年目の患者さんだと、ほとんどただ抜くだけという症例は多いですが、紹介されるケースはあります。
南口医師)
そうですよね。抜去施設と連携が取れているのであれば、やっぱり紹介いただいた方がいいと思いますね。大体数年以内であれば、ちょっとレーザーを照射する、メカニカルシースを入れるだけで抜去できるケースもあるので。例えば、リード抜去の施設認定のない自施設でやってみて、スクリューが戻らないというケースがあった時、そこで無理に引っ張るというのは怖いので、できれば抜去認定施設と提携してやるのがいいかなと思います。
司会)
2年とか3年であればほとんどは問題ないですが、やっぱり例外もあるのでメカニカルはあった方がいいかなと思いますね。
司会)
LVリードを先に抜かない方がいいというお話しがあると思いますが、それについて教えてください。
梶山先生)
HRSでウィルコフ先生もお話しされてたんですけど、端的に言えばショックリードの方が丈夫なので、そちらから抜去を進めていって、癒着組織がある程度壊された後にLVリードを触ったほうが、LVリードはダメージがなくて済むということだと思うんですけど。
逆にLVリードとかを先に攻めてしまうと、ちょっと弱いので、ブレーキしたりして感染ができないことが多いというふうに話をされていました。我々のデータじゃないので、 細かいところが分からないんですけど。
司会)
南口先生はどうお考えですか?
南口医師)
LVリードはみなさん結構スルッと抜けると言うイメージを持たれていると思うんですけど、結構難しいです。梶山先生がおっしゃっていた通り、ICDリードが一番バックアップ取れるんですね。それはロッキングが奥まで入らなくても、ショックリードのコイルを直接牽引することができるので、 バックアップがすごく取りやすいので、LVリードの植込み年数が短いと、先に抜去してしまいがちなんですけど、苦戦することも結構あるので、今の話をお伺いしてICDリードから抜くというのはいいと思いました。
千葉大学大学院医学研究院 不整脈先端治療学
梶山 貴嗣 医師
大阪けいさつ病院 循環器内科副部長
先進不整脈治療センター センター長 南口 仁 医師
司会)
サイドヘリックス付きのLVリード(Attain Stability™ Quad: ASQ(Medtonic社製))に関しては南口先生もファーストチョイスでは使わないですか?
南口医師)
使わないですね。やっぱり固定したサイドヘリックス(スクリュー)が戻るとは言うんですけど、いろんなところに癒着されると、LVリード先端のサイドヘリックス(スクリュー)までテンションがかからないというケースがあると思うんですね。そうなると次の手がなかなかなくて、まして足から引っ張ってうまく抜けるかという保証もないので、できるだけLVリードを入れるときに気をつけて、安全に抜けそうなものを選択しています。
司会)
LVリードは癒着のイメージがあんまりないのですが、電極のところに近いと癒着するケースが多いという印象ですか?
南口医師)
そうですね。やっぱり冠状静脈の入口部や側枝の屈曲のところというのもあるんですけども、どちらかというとLVリードの電極のところで苦労するかなというケースですね。
すぐ抜けるのもあれば、そうじゃないものもあるので、思いのほか難しいというのが、ここ1年くらいの印象ですね。
梶山医師)
私自身LVリードの抜去経験はそこまでないんですが、1点だけお話しすると、ハネがついているタイプの1番電極がどうしても外れれなくて、リードが壊れて、1番電極と1番電極のコンダクターは心臓内に残っちゃったんですよ。結局それはどうしようもなくて、ハネつきのリードも僕は今なるべく使わないようにしています。
南口医師)
僕もまだ経験はないですけど、確かにそうかもしれないですね。LVリードが抜けなかった時に、選択肢がそんなにないんですよね。上から引っ張るか、足から引っ張るか。足からに変更してもそんなに変わらないかなと思っていて、結構難しいんじゃないかなと思っていいます。正直、バイチャンス的な要素も大きいと思うので、LVリードの抜去はこれからのちょっとした課題だなと思っています。
司会)
現状、断線のリードについては、南口先生はどういう対応されています?
南口医師)
やっぱり断線リードって、結構リード自体が悪いことがあって、リードのスタイレットルーメンが潰れてたりするケースも多いので、難しいですよね。結局2本のうち断線した1本だけ抜くことができなくて、結局全部抜いて。でも全部抜いて新たにリードを入れると、そこからその人にとっては新しいリードになるので、それはそれでMRI撮像も可能となりハッピーなのかと思うんですけど、やっぱり将来的に遺残リードがあってもMRIが撮像可能となるのであれば、リード抜去しない選択肢も確かにありなのかなという気は最近しています。
司会)
今の方向性からいくと、おそらく遺残リードはキャップのところが発火するリスクが高いというふうに今の実験でも報告されていて、そこはキャップするという前提で、多分取れる方向に世界的になるんですね。ただ、造影して詰まっている場合、左から入れていて、左の鎖骨下から入れて詰まっていたときに右を潰して右から入れるのか抜くのかというと、抜いた方が道ができるので、その面は個人としてはメリットが高いかなと思っています。
司会)
抜去という選択を持っている施設の先生方というのは、そもそももう抜かずに追加するということは現状ではやられていないでしょうか。
南口医師)
いや、そんなことはないです。やはり年数とかによりますね。僕自体も10年一つの区切りにしていて、15年のICリードが入っていたというケースでは追加で終わったというケースもあるので、その辺りは症例ことの判断になってきますけれども。ただやはりデバイス植込み側の血管が閉塞していて、対側に入れた場合も、対側が感染してしまったら、次もどうするみたいな話になっちゃうので、できるだけ片側で終われるようなストラテジーをたてています。血管が開存しているなら確かに追加で、将来的には遺残リードがあってもMRIが撮像可能となってくるので、それでいいかなと思っています。リード線二本が三本になったとしても腕が腫れたりするというケースは少ないと思うので、必ずしもリード線を抜かないといけないかというと、そうでもないかなと思っています。
梶山医師)
そうですね。私も80代で10年経ってたら、どっちでも積極的に抜くかというと、多分追加になる可能性が高いかと思います。逆に40代になったら抜くことを選択すると思いますし、それは患者さんごとに考えていますし、何でも無条件に抜いているわけではないです。
司会)
やっぱり患者さんにメリットにという、あとで考えてあれがベストなストラテジーだったのかというのを考えてやると、どうしても必ず抜くとはならないかなという感じはしますね。あと外科の意見ももちろんありますけど。というところですかね。
基本的には私たちも紹介されたら必ず抜くわけではないので、リードマネジメントでご紹介いただいて、それでちょっと提案をさせてもらうというスタンスですかね。
特に非感染に関してはかなりこれからもちょっと変わっていく、ガイドラインも変わっていくところになりますので、ちょっとデータをキャッチアップして、情報をキャッチアップしていただいて、リードマネジメントしていただければというふうに思います。
司会)
千葉大学大学院医学研究院
循環器内科学 准教授
近藤 祐介医師